【相続登記が義務化その背景解説】

相続登記の義務化の背景には、所有者不明の土地の問題が深く関わっています。
相続登記がなされないことで、所有者が特定できず「有効な土地利用ができない」ということで国レベルで大きな問題<所有者不明者の土地>は、相続する相続人が相続登記をせずに時間が経ち、更にその相続した相続人が亡くなり、誰が相続して、誰が土地の所有者か分からない状態です。具体的には、不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地や所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地の事を言います。

相続登記義務化:所有者不明土地問題

所有者不明の土地の家は、ゴミ屋敷のような状態になり、地域の環境や治安が悪くなったり、火事の温床にもなりやすいとも言われています。また、所有者が分からないことで、公共事業や開発工事に土地の購入が出来ないことでいつまでも工事を進めることができず住民サービスがストップしてしまいます。さらには、日々の生活を支える財源である地方税である固定資産税の未徴収問題があります。所有者不明の土地は、2016年時点で、410万haあると言われています。410万haというのは、九州の面積を上回る面積です。九州の面積を上回る面積が、固定資産税が徴収できていない状態です。

このような背景から、所有者不明の土地の解消が議論されてきました。その解決策として運用されるのが「相続登記の義務化」です。

「そもそも相続登記とは?」

土地や建物は、法務局で、誰の物なのかを管理をしています。名義が変わる時に、法務局で、誰が所有するかを変更する登記を行います。人が亡くなり、被相続人から相続人へ相続する際に行う登記が、相続登記です。

「義務されることによってどう変わるのか」

相続登記は、これまで登記をしなければいけないという法的義務がありませんでした。その為、手続きが面倒くさいという理由や費用がもったいないという事で手続きをしない人がいました。また、相続登記はしたくても、遺産分割で揉めていて、誰が相続するのかが決まらず、相続登記が出来ないという人もたくさんいます。このような状況から、相続登記がされない為、相続登記を義務化する事になりました。

相続登記の義務化は、令和6年(2024年)4月1日から始まります。気を付けたいのは、多くの法律は、法律が施行される施行日以降のものが対象になっていきますが、相続登記の義務化は、令和6年4月1日以前に発生した相続にも適用されます。具体的にいつまでに相続登記を行わなければいけないのかというと、次のいずれか遅い日から3年以内となります。

つまり、3年以内の期限の起算日(スタート日)は、相続開始日ではなく、”不動産の所有権を相続したことを知った日”です

1.施行日(令和6年(2024年)4月1日)
2.自己の為に相続開始を知り、かつ、不動産の所有権を取得した事を知った日

施行日以降に相続開始を知った、不動産の所有権を取得した事を知った場合には、その日から3年以内。施行日よりも前に、相続開始を知った、不動産の所有権を取得した事を知った場合には、令和9年(2027年)4月1日までに、相続登記を行う必要があります。施行日の令和6年(2024年)4月1日以降、正当な理由がないにもかかわらず申請をしなかった場合には、10万円以下の過料が科されることがあります。

「相続登記を行わない事のデメリット」

不動産自体の売却が出来きなくなることが大きなデメリットですが、他の不動産の共同担保にするなどの担保設定も出来ません。さらには、相続が数次にわたることで子・孫・玄孫へと共有持ち分を持つ人数がズミ算式に増えます。共有持分を持つ人の数が多くなると、この不動産を有効利用したい、処分したいと思う現在時点の不動産に住む住人(推定相続人の一人の場合)、共有持ち分を持っている人全員の合意と手続きが必要になるので、膨大な作業量が必要になります。また、その中の1人でも、納得しない人がいれば前に進める事も出来ないですし、共有持分を持っている人が多いと、司法書士に登記を依頼した時の費用も高くなります。あとは、共有持ち分を持っている人の中に借金をしている人がいたら、その債権者は借金をしている人の法定相続分を差し押さえる事が出来ます。そして、その借金が返せないと、その共有持ち分が競売に出されるなどして、第三者の手に渡る事もあります。

このように、共有持ち分を持つ人が増えると、利用が制限され、処分が難しくなり、費用も高くなって、トラブルに巻き込まれるリスクも出てきます。相続登記をしないというのは、自分の代でのリスクやデメリットを将来に先送りにして、将来さらに、子供や孫たちの代で、そのリスクやデメリットが増大していくという図式です。なので、リスクやデメリットを将来に先送りにするのではなく、出来る限り早く解決してしまいましょう。

【相続登記を行う方法】

相続登記の流れ

相続登記の準備として、該当不動産の状況を確認し、被相続人と相続人の書類を準備します。該当不動産に関しては、登記簿謄本を取得し、現在の状況を確認し、被相続人と相続人に関しては、戸籍謄本等を収集します。具体的には、戸籍謄本、改製原戸籍、除籍謄本、附票などです。被相続人に関しては、誰が相続人なのかを確実のものにする為に、出生から死亡までの戸籍を取得します。

被相続人と相続人の戸籍が揃い、誰が相続人か確定したら、遺言が無い場合は、相続人全員で話し合い、それを書類にまとめます。この相続人全員で話し合う事を遺産分割協議と言い、まとめる書類の事を遺産分割協議書と言います。遺産分割協議書には、相続人全員の署名と実印での捺印が必要になります。

相続登記に必要な書類と費用

被相続人に関する書類は、出生から死亡までの戸籍謄本等。相続人に関する書類は、不動産を相続する人だけではなく、全員の戸籍謄本、不動産を相続する人の住民票、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書、本人確認書類。不動産に関する書類としては、評価証明書が必要となります。これらが準備出来たら、不動産の所在地を管轄する法務局で手続きを行います。この時に、登録免許税を支払います。登録免許税は、相続登記の場合、固定資産税評価額の0.4%です。

相続登記は、書類の収集、遺産分割協議書の作成などに、非常に多くの手間と時間がかかります。しかも、自分でやるという事は、経験が浅い為に、分からない事を聞いたり、書類の不備などで、法務局に何度も出向く事になる場合もあります。そのような事も有り専門家(司法書士)に依頼する事が一般的です。

そこで、司法書士に依頼する場合のかかる費用としては、不動産の数、相続人の数、司法書士が行う手続きの量にもよります。一般的な相場として、名義変更手続き報酬。いわゆる相続登記に直接関する報酬は大体5~10万円程度で、戸籍謄本取得代行報酬が2~5万円程度、遺産分割協議書の作成報酬ですが、作成する遺産分割協議書の中身によっても、費用が変わります。もし、該当不動産のみであれば、1~3万円程度、該当不動産以外の財産も記載する遺産分割協議書を作成する場合には、5~15万円程度です。尚、相続人が1人の時は、遺産分割協議書を作成しなくても大丈夫です。この遺産分割協議書を作成する時は、揉めていないという事が前提となります。相続登記自体は、司法書士の専門分野ですが、揉めている相続の間に立つ仕事は司法書士ではなく、弁護士の専門分野になります。紛争状態・揉めている場合には、弁護士を紹介され、別途費用が掛かる事もあります。このように揉めている場合には、遺産分割協議書が3年以内に作成出来ないという事も考えられると思います。

【 まとめ 】

相続登記の義務化は、相続登記をしてもらうことが目的というよりも、所有者不明の土地を無くすという事が目的なので、最悪相続登記が出来なくても、誰が所有者かを明確にすればペナルティである過料は科しませんしませんという制度も用意されています。それが「相続人申告登記」です。相続登記の場合であれば、遺産分割協議書が必要ですが、相続人申告登記は、遺産分割協議書の添付の必要が無く、単独で行う事が出来ます。この相続人申告登記をしておくことで、過料を科される事はなくなります。この相続人申告登記は、令和6年(2024年)4月1日から開始される予定です。

不動産登記実務は司法書士が行わなければなりませんが、遺産分割協議書作成や戸籍謄本取得については行政書士も行えます。更には、田畑・山林の相続手続きや処分については行政書士の専業となります。遺産相続全般の手続きにおいて我々行政書士が他士業(税理士・弁護士・司法書士等)のハブとして連携しチームで行っておりますので安心してお問い合わせください。

 ⇩相続登記義務化で不動産についてのご相談は

福岡市南区の「 行政書士 MKリズム オフィスホームページ 」お問い合わせへ