相続トラブル!親の介護をした場合の“寄与分”について

相続におけるお亡くなりになった両親を生前に子供が介護した際の負担の偏りは、相続トラブルの一つとして非常に一般的です。親の介護や看護をした子供としなかった子供の間での遺産相続において、公平性や平等を考慮する必要があります。その負担の偏りを調整するために「寄与分」という法的制度がありますがその利点と欠点を説明します。

介護をした子供としなかった子供の相続

長い間介護を続け金銭的にも肉体的にも、そして精神的にも大きな負担を負った相続人のその苦労や負担を相続の際に反映させることが認められています。その負担を遺産分割の際に請求できる制度が「寄与分」(“特別の寄与の制度”については別の機会で説明します)です。遺産分割を行う際には相続人全員で遺産分割協議を行います。その際、介護や看護を行った人は、寄与分を主張しなければ、他の相続人より多くの遺産を相続することはできませんし、遺産分割協議を行う場合は、相続人全員の合意がなければ成立しません。そのため、協議がまとまらずに実務上はほとんどの場合認められないことが多いのが実情です。

「寄与分」は認められるでも、厳しい要件

一般的に「寄与分」が認められる要件とは?

① 対価を受け取っていないor無償に近いこと
② 通常の身分関係から期待される程度を超える「特別の貢献」であること
③ 長期間継続し、行為に専念していたこと
④ 被相続人の財産の維持or増加に因果関係が認められること

となり、単に、介護をしているからといって、すべてが「寄与分」になるわけではなく、「被相続人の財産の維持又は増加」がもたらされたことが必要となります。親の面倒をみていたといっても、通常の扶養義務の範囲内での「療養介護」は認められていません。

「寄与分」でいくら相続財産割合が増える?

介護をした子供と介護をしなかった子供二人が相続人としたケースの場合、法定相続分はそれぞれ二分の一ずつですが「寄与分」がある子供の主張として三分の2の遺産分割が妥当だとして主張しても、実際は違い相続できる割合変更できるのではなく子供が介護に要した時間を介護ヘルパーを頼んだ時に支払うはずであった金額に換算して「寄与分」の金額を計算することになっています。そのため、期待するような金額算定にならない額に収まることで介護した子供の苦労は救済されないケースが多いようです。

「寄与分」に代わる相続対策

「寄与分」は、実務上は認められるケースが少ないため、実質的に「寄与分」を主張しなくても同等の相続財産を取得できる形にしておくのが一番望ましい形です。そのため、介護をしてきた子供が取れる対策として方法が3つあります。

1.遺言による遺贈;

親があらかじめ遺言書を作っておき「介護を献身的にしてくれた○○子には遺産の6割を、残る○○美には4割を相続させます。」と言った内容の遺言書を残すことで遺留分を侵害しない遺産の分割を指定できます。

2.生前贈与;

先に生前贈与で財産を渡し、特別受益の持ち戻し免除の意思表示をしておくことで多くの財産を引き継ぐことが出来ます。

3.生命保険の活用;

生命保険の受取人に指定しておくことも有効な手段です。生命保険は、相続税の非課税枠も認められるため、財産を渡す方法として有効な手段となります。

【 まとめ 】

介護を献身的に行った子供の苦労が報われるための「寄与分」と言った法的制度は、実務上認められず、相続人間での財産配分において感情的な紛争を引き起こす可能性があります。介護や財産管理などの貢献を具体的に評価し、その子ためには「寄与分」と言った制度によらずそれに代わる相続対策を行っておくことが、今介護を受けている子供に対する思いやりではないでしょうか。

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