農業をしない人の農地相続

都会や町中に住む人でサラリーマンやその配偶者の方の実家が農業をしていて、いざ相続が発生した場合の農地をご自身で維持することは、難しいこと思います。
そこで今回は、農業をしない方が農地を相続した場合のそれぞれの手続き、およびメリットとデメリットについて対処法を中心に解説します。

1.農地の売却

農地を相続して農業を行わないでいると、相続税の納税の猶予を受けられない上に、固定資産税などの負担も発生します。そのため、農地を相続した場合、その農地を放置することは絶対におすすめしません。
そこで、相続した農地を売却することは、農業を行わない相続人にとって一つの選択肢です。売却手続きには以下のようなステップが含まれます。

売却の手続き:農地を農地のまま売却する

相続した農地を売却する際は、いったん相続人が相続登記(農業委員会に届出も必要;農地法第3条の3第1項規定)をしてから売却する運びになります。
以前までは農地は一定の要件を満たした農家にしか売却できませんでしたが(「農家資格」の規制が撤廃:令和5年4月)、現在でも耕作地の場所や広さによってはなかなかすぐには買い手が見つからない場合もあります。また、個人間で勝手に売買することも認められておらず、農業委員会の許可を得る必要があります。
他にも登記簿上の地目が“農地”となっている場合などでもさまざまな手続きが必要となるため、いずれにしても時間がかかってしまうことが予想されます。ただし、現在は農地の所有は法人(株式会社・農業組合法人等)にも認められたことは、農地売却のハードルは以前ほど高くはないでしょう。
農地をそのまま売却する場合は、売却できる可能性をよく検討し、調査を行った上で判断するようにしましょう。

2.農地の貸借

農地の借り手を探して農地を維持することもできます。
農業委員会では、例えば、相続した方が地元を離れていて、自分では手入れができない場合に、農地の管理についてのご相談や、地元で借り手を探すなどのお手伝いをします。
上記届出(農地法第3条の3第1項規定)に農業委員会によるあっせんの希望を申し入れることで相続人自身が賃借人を探すなど骨を折ることもないようです。
売買と同じように農地はある一定の要件のもと法人が借り手となることも現在はあります。

3.農地の転用

農地の転用は、農業以外の目的で利用することを指します。転用する場合農業委員会への「届出」で転用できる“市街化区域”にある農地(町中にある田んぼや畑)であれば、宅地や駐車場に転用は比較的簡単ですが、都道県知事の「許可」が必要となる市街化調整区域、いわゆる農業振興地域にある農地を宅地にして売却を考えても、基本的に転用はNGとなるケースがほとんどです。
「届出」で済む転用にも承諾を得るまでの期間は、数か月(計画・申請書作成~申請~承認)はかかりますし「許可」はさらに手続きが複雑化するため、個人での対処はほぼ無理な手続きで、専門家に依頼したとしても許可が下りるまでかなりの期間を要することになります。また、宅地に転用した際は農地の時とは違い固定資産税がアップすることも忘れずに検討することが必要です。

【 まとめ 】

農業をしない方が農地を相続した場合のそれぞれの手続き、およびメリットとデメリットについて農地の売却、賃貸借、転用3つの視点で解説しました。
いつか農地を相続することが予想される方は、相続後にどうするかを事前に考えておき、早めに決断できるようにしておくと良いですね。

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