「相続土地国庫帰属制度」は、相続又は遺贈によって宅地や田畑、森林などの土地の所有権を相続した人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国に引き渡す(国庫に帰属させる)ことができる新しい制度です。
相続土地国庫帰属制度が創設された背景として相続をした土地自体が、過疎地域の土地や農地、森林などで利用出来ない、住宅地でも遠方に住んでいるから利用できない。また、土地を管理しなければならないが費用や労力の負担が大きく、その上固定資産税まで取られることを嫌ってそのような土地の相続を敢えてしない、などの理由に起因して、所有者不明土地(約410万ha;九州全体の土地367.5万haを上回る)が生じ、環境悪化や公共事業の開発に支障が出ることで大きな社会問題となっていました。
そんな所有者不明の土地を無くす為に「相続登記の義務化」が始まります。令和6年(2024年)4月1日から始まり、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければ10万円以下の過料が科される可能性があるというものです。
ただ、相続登記の義務化が始まると、上記のような相続したくない不動産も相続することになります。
相続したくない不動産を相続してもらうだけではなく、手放すという選択肢を与えようと創設されたのが、今回のテーマである「相続土地国庫帰属制度」です。
要らない不動産を一定の要件さえ満たせば、国に引き渡す事が出来ます。つまり、相続登記はしてもらうけど、処分も出来る!という建付の制度になります。
この制度が使える人
相続した土地を国に引き渡すための申請ができるのは、相続や遺贈で土地を取得した相続人です。遺贈で受け取った土地でも法定相続人でない場合は、申請が出来ません。
また、相続土地国庫帰属制度の開始される令和5年(2023年)4月27日より前に相続した土地でも申請できます。兄弟など複数の人たちで相続した共同所有の土地でも申請ができます。その場合は、所有者全員で申請する必要があります。なお、生前贈与を受けた相続人、売買などによって自ら土地を取得した人、法人などは、相続や遺贈で土地を取得した相続人ではないため、申請ができません。
引き渡せる土地の要件
相続した土地であっても全ての土地を国に引き渡すことができるわけではなく、引き渡すためには、その土地に建物がないことなど、法令で定める引き取れない土地の要件に当てはまらない必要があります。
(1)申請の段階で却下となる土地
A) 建物がある土地
B) 担保権や使用収益権が設定されている土地
C) 他人の利用が予定されている土地
D) 特定の有害物質によって土壌汚染されている土地
E) 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
(2)該当すると判断された場合に不承認となる土地
A) 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
B) 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
C) 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
D) 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
E) その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
申請する際の費用
申請する際には、1筆の土地当たり1万4000円の審査手数料を納付する必要があります。
さらに、法務局による審査を経て承認されると、土地の性質に応じた標準的な管理費用を考慮して算出した10年分の土地管理費相当額の負担金を納付します。負担金は、1筆ごとに20万円が基本です。
手続きの流れ
ステップ1 法務局へ相談
ステップ2 承認申請。
ステップ3 法務大臣(法務局)による要件審査、承認
ステップ4 負担金の納付
ステップ5 国庫帰属
申請をしてから結果がでるまでの標準処理期間は、半年から1年と見込まれています。
【 まとめ 】
相続土地国庫帰属制度を使って土地を国に引き取ってもらうには、要件をしっかり把握したうえで申請することが重要です。更地が条件だからと言って、建物を解体し(30坪≒200~300万円)審査(1筆14000円)を受けて申請したけれど、結局相続した土地の所有権を国庫に帰属させることができなかった場合は更地になった固定資産税が高くなったなどのリスクが潜んでいるので安易に独自に申請するのではなく、相続土地国庫帰属制度に詳しい専門家に相談してからにしましょう。
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