相続対策に生命保険を活用することは、多くの方がご存じと思いますが保険の種類や、気を付けるべきポイントなど具体的に知らない方が多く生命保険の営業担当者の言うがまま入った生命保険で、かえって税金を多く払ったことなどと言うことが無いように今回は、生命保険の基本から説明したいと思います。
保険の用語
保険契約者・・・保険契約をした人で、契約の権利と保険料の支払い義務を持つ人
被保険者・・・生死・病気・ケガなど保険の対象となっている人
受取人・・・保険金・給付金・年金などを受け取る人
保険料・・・契約者が保険会社に支払うお金
保険金・・・被保険者の死亡・高度障害状態・満期などの時に保険会社から受取人に支払われるお金
保険の種類
終身保険
死亡・高度障害の保障が一生涯続き、死亡時に保険金が支払われる保険。保険期間が終身なので、途中で解約しない限り、保険金はいつか必ず支払われます。保障が一生涯続くからこそ、終身保険の保険料は、掛け捨てではなく、積み立てタイプです。一時払いの終身保険だと、90歳でも、加入出来る商品があります。
定期保険
保険期間内に被保険者が死亡または高度障害になった場合に、保険金が支払われる保険。保険料は掛け捨てで、満期保険金はありませんが、同じ保険金額の終身保険より保険料が割安になる事が特徴です。期間に定めがあるので、相続対策では、定期保険は基本的には使いません(相続対策には不向き)。
養老保険
保険期間内に、死亡・高度障害状態になれば死亡保険金または高度障害保険金が、満期まで生存していれば満期保険金が支払われます。終身保険のように、掛け捨てではありませんが、期間に定めがある保険なので、相続では基本的に使いません。
相続対策に使うのは基本的に「終身保険」になります。
生命保険の相続時の取り扱い
生命保険の相続時の取り扱いは、遺産分割と相続税で異なります。なぜなら、遺産分割は民法、相続税は相続税法の話だからです。ここが理解出来ていないと、良かれと思って加入した生命保険が争いの火種になる事もあるので、しっかりと押さえてください。
遺産分割での取り扱い
生命保険は、原則として、相続財産ではありません。生命保険金を受け取った受取人固有の財産です。その為、遺産分割の対象ではありません。遺産分割の対象ではありませんので、遺留分の対象にもなりません。
尚、誰か1人に渡したいから、というような形で、財産を全て、生命保険にするような場合は、『通常ありえないほどの不公平』が生じるという事で、認められないという裁判所の判断が出た事があります。
相続税の取り扱い
相続税法という法律は、民法という大きな法律の中にある小さな法律です。なので、原則は、民法に従い、相続税法で決められた特別な内容があれば相続税法に従います。そう考えると、生命保険の保険金は、基本的には相続財産ではありません。しかし、相続税の計算上は、相続財産とみなして相続財産に計上します。なので、みなし相続財産という取り扱いです。生命保険の保険金は、相続財産ではありませんが、みなし相続財産として、一度相続財産に全額計上します。その上で、500万円×法定相続人に数を限度額として非課税にする措置があります。非課税限度額は、500万円×法定相続人の数で決まりますが、各相続人にどれだけ適用するかは、次の式になります。
その相続人が課税される生命保険金の金額=その相続人が受け取った生命保険金の金額-非課税限度額×その相続人が受け取った生命保険金の金額/全ての相続人が受け取った生命保険金の合計額
このように、全体の生命保険の保険金額に対して、受け取った生命保険金の保険金額が幾らという比率によって、使える非課税枠が変わります。
<被相続人と子供3人 財産1億円>
「生命保険に入っていない場合」 相続税は630万円
「生命保険に入っている場合」 財産1億円 生命保険1500万円 相続税は405万円となり
節税効果225万円となります。現金を「生命保険」に形を変えることで得られる効果になります。
以上から、相続財産として計上しない“遺産分割”とみなし相続財産として相続財産に計上する“相続税”という制度(性質)を理解しておきましょう。
相続対策として使える生命保険加入の仕方
生命保険の課税関係
生命保険は、契約者、被保険者、受取人の関係で課税される税金の種類が変わります。課税される税金は、相続税、所得税、贈与税の3種類です。相続税の非課税枠が使えるのは、相続税の時だけなので、今からお伝えする内容は、確実におさえた状態で、生命保険には加入してください。
相続税の非課税枠が使えるケース
契約者と被保険者が同じ場合です。
例えば、契約者が父、被保険者が父、受取人が母という状態です。
所得税がかかるケース
契約者と受取人が同じ場合です。例えば、契約者が父、被保険者が母、受取人が父という状態です。
贈与税がかかるケース
契約者、被保険者、受取人がそれぞれ異なる場合です。例えば、契約者が父、被保険者が母、受取人が子供という状態です。父が保険料を払い母が亡くなった時に、保険料を払っていない子供が経済的な利益を受けることになり(母が亡くなり父は存命でも税法上贈与とみなされる)みなし贈与と取り扱われることになります。
相続税、所得税、贈与税の3種類の契約形態の理解が大切です。相続税の非課税枠を使うためには契約者、被保険者が同じ保険にする必要があります。目的によって加入方法が変わるのでどのように加入したらどの税金がかかるのかを押さえておきましょう。
相続対策の生命保険の注意すべき:3つのポイント
遺産分割:
生命保険は遺産分割の対象になりませんが、兄弟二人のうち一人だけに生命保険の受取人とした場合受け取らない側に不満が残り遺産分割争いの火種となります。そうならない為にも遺産分割対策は遺言等とのセットで行うことが大事です。
受取人を孫にしない:
・ 生命保険の非課税枠が使えない(代襲相続を除く)
・ 二割加算の対象になる(代襲相続を除く)
・ 生前贈与が持ち戻しの対象になる
孫を受取人にすることでメリットはなく、デメリットが多くなります。基本的に受取人は孫ではなく子供にすることが良いでしょう。
名義保険:
子や孫が契約者の保険を父母や祖父母が保険料を支払うことですが、税務調査で判明する率が高くかえって贈与税など多くの税金を払うことになりってしまいます。
生命保険を使った相続対策
① 相続税の非課税枠を使う
② 不動産等分割がしにくい財産がある場合
③ 多く残したい相続人がいる場合
などこれ以外でも生命保険は良い相続対策の原資となることがお判りいただけたのではないでしょうか。
相続対策で生命保険の活用を考えている方は、上記の基本を押さえたうえで検討してみると良いと思います。
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